3分で丸わかりゴルフ4大大会の魅力と歴史~全英オープン篇~
プロゴルファーたちが目標に掲げるのが「4大大会制覇」。日本人選手はもちろん、世界中のプロゴルファーたちが集まり、しのぎを削り合う姿は多くのファンを魅了します。その中でも最も権威ある大会とされているのが全英オープン。イギリスでは夏のスポーツの祭典とされている大会の歴史と見どころを紹介します。
毎年7月に行われることで知られている全英オープン。ゴルフ4大大会の中でも最も歴史が深く、記念すべき第1回大会は日本がまだ江戸時代だった1860年に開催されました。
ちなみにこの時の大会名は現在の正式名称と同じ「The Open Championship」。これはゴルフ発祥の地であるイギリスにおいて、この大会が最初の選手権大会であることを指し、全英オープンが今もなお権威ある大会である所以と言えます。以来、第二次世界大戦などの戦争による中止を挟みながら毎年開催され、2019年で148回目の開催となりました。
そんな第1回全英オープンが開催された会場はスコットランドにあるプレストウィック・ゴルフ・クラブ。スコットランド西海岸地域に位置するこのコースを使用したことをキッカケに開催されるゴルフ場は海岸に立地するコースが恒例となっています。
第1回大会が開催されたプレストウィック・ゴルフ・クラブは第12回まで開催され、近年はゴルフの聖地と言われるセント・アンドルーズを筆頭に、ロイヤル・リザム&セント・アンズ、ロイヤル・トゥルーン、ロイヤル・セント・ジョージズ、ロイヤル・バークデール、ミュアフィールド、ターンベリーの7つのコースを持ち回り制で開催。そんな中、最近のメジャーにおける北アイルランド勢の活躍を受け、2019年は北アイルランドのロイヤルポートラッシュで68年ぶりに行われたことで話題になりました。
数ある開催地の中でもセント・アンドルーズは1990年以降、ゴルフの聖地に敬意を示す意味合いで5年に1度、全英オープンの開催コースとなるのが慣例となっています。
「人工的なものに頼らず、自然の状態のままでの勝負」を好むイギリスのスポーツ文化は全英オープンでも当てはまります。海岸に立地するコースで行われるため、起伏に富んだフェアウェイや深いバンカー、そしてフェスキューと呼ばれる洋芝が生い茂り、ボールを探すのも困難になるほどのラフなど、どこを取ってもクセのあるコースで、他の大会とは一線を画しています。
また、海岸に近いせいで不安定な天候で開催されやすいのも全英オープンの特徴で、選手たちは寒く、ジメジメとした雨が降るスコットランドならではの天候と、海から吹く強く湿った風にさらされながらプレーすることを余儀なくされます。難コースに、バットコンディションで行われることが多い全英オープンでは、選手のアプローチが通常の大会とは異なり、やや低めの弾道の球を打てる選手が好成績を残す傾向があります。
そのため、全英オープンは選手のコース経験が問われることが多く、2014年には過去にこの大会を5度制しているトム・ワトソンが大会史上最年長となる64歳で予選を通過し、世界中のゴルフファンの中で大きな話題になったのは記憶に新しいことでしょう。
そんな激戦を制した優勝者には「クラレット・ジャグ」と呼ばれる優勝トロフィーが送られるのが通例。このトロフィーは優勝が決まる瞬間を見計らって優勝者の名前を刻印され、優勝者の下で1年間保管されることになっています。
ちなみに2019年の全英オープンは前述の通り、68年ぶりにロイヤルポートラッシュで開催。多くの選手が初コースとなり、混戦模様とされた大一番でしたが、アイルランドのシェーン・ローリーが2位に6打差をつけてメジャー初優勝を飾りました。
シェーン・ローリーはアマチュア時代には史上3人目となるヨーロピアンツアーの優勝を果たし将来を嘱望されていたスター候補生でしたが、プロ転向後は2016年から2年ほど優勝から遠ざかるなど苦しいシーズンを過ごしていました。しかし、今回のツアー初優勝で、ようやく大器がその片鱗を見せる形になりました。
ちなみに、女子プロゴルファーによる「全英女子オープン」は全英オープンが行われてからおよそ100年後の1976年にフルフォードゴルフクラブで開催され、以降は男子の全英オープン同様に持ち回り制で行われています。そして、2019年はウォーバンゴルフ&カントリークラブで行われ、日本人女子プロゴルファーの渋野日向子が初の海外試合をものともせずに優勝しました。
日本人によるメジャー大会制覇は1977年に全米女子プロゴルフ選手権を制した樋口久子以来、42年ぶりの快挙でした。渋野日向子は今回が初のメジャー大会出場にもかかわらず、プレー中も終始笑顔でファンと交流していたことから「笑顔のシンデレラ」と称されたのは記憶に新しいことでしょう。
男女とも新たなスターが誕生した2019年の全英オープン。2020年の全英オープンの栄冠は一体、誰に輝くのでしょうか?