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3分で丸わかり! ゴルフ4大大会の魅力と歴史~全米プロゴルフ選手権篇~

プロゴルファーたちが目標に掲げるのが「4大大会制覇」。日本人選手はもちろん、世界中のプロゴルファーたちが集まり、しのぎを削り合う姿は多くのファンを魅了します。その中でも「プロ中のプロが集まる」と称されているのが全米プロゴルフ選手権。2019年から開催時期が変わり、話題になった大会の概要を紹介します。

印象は薄くとも見どころ満載!? プロゴルファー最高峰の戦い

ゴルフの4大大会と言えば、シーズン開幕直後の4月にマスターズ・トーナメントからはじまり、6月は全米オープン、7月に行われる全英オープンと今回紹介する全米プロゴルフ選手権ですが、その中でも最も影が薄い大会と言われているのがこの大会。毎年8月に開催されていたため、「灼熱の太陽の中で競う大会」という他の大会にはないキャラ付けがあったのですが、2019年からは開催時期が5月に変更されてしまい、よりキャラが薄くなった印象は否めません。

そんな全米プロゴルフ選手権が初めて開催されたのは1916年。全米オープンでのアメリカ人ゴルファーの活躍が目立ち始めたころで、ちょうどアメリカのゴルフ人気がピークの時期だったため、人気の大会になると思われましたが、翌1917年からは第一次世界大戦が激化したために中止せざるを得ないという憂き目にも遭いました。また、他の大会と比べて参加者が少なかったせいか、当時としても珍しいマッチプレー形式で争うというスタイルを1957年まで行っていました。

Ben Stokes chooses his club during the BMW PGA Championship Pro Am at Wentworth Club, Virginia Water on Wednesday 18th September 2019. (Photo by Jon Bromley/MI News/NurPhoto via Getty Images)

マッチプレー形式とはその名の通り、2名もしくは2組のプレーヤーが1対1で対戦し、1ホールごとにストローク数で勝敗を決める競技方法。本来のゴルフの形態はこの方式で、1対1の対戦は見どころもありそうですが、勝者は次の相手とまた1対1で戦うという勝ち抜き戦なので、当然ながら参加者が増えると時間がかかるようになります。そのため、1958年以降はほかの大会と同じようにストロークプレー方式を採用し今日に至ります。

そんな全米プロゴルフ選手権の最大の特徴は「プロのゴルファーしか参加できない」というところ。ほかの大会はアマチュアゴルファーも参加することができるのですが、全米プロゴルフ選手権はその名の通り、参加資格はプロゴルファーにしか与えられていません。しかも、参加できるのは過去の全米プロゴルフ選手権優勝者や過去5回のマスターズ、全米オープン、全英オープンの優勝者など世界でもトップクラスのゴルファーのみ。出場選手は皆トッププレーヤーだけに有名選手のプレーを見たい方にはピッタリな大会と言えます。

歴代の優勝者を見ると、帝王の異名で知られるジャック・ニクラス、タイガー・ウッズなどの大物が名を連ねている一方で、初参戦で優勝したという波乱が起こるというオールプロの大会らしからぬ顔も持っています。その中でも特に有名なのが1991年の優勝者、ジョン・デーリーでしょう。

John Daly 1995 Nissan Open PGA TOUR Archive via Getty Images

今でこそPGAツアー5勝を挙げた名選手として知られていますが、1987年にプロ入りしたばかりのデーリーはまだまだ25歳の無名選手。大味なゴルフと堂々たる体躯(180センチ・100キロ)でカルト的な人気を得ていましたが、この年の全米プロゴルフ選手権への出場権はなく、補欠選手という扱いでした。

ところが大会直前、全米プロゴルフ選手権に出場予定だったニック・プライスが妻の出産に立ち会うことになり急遽参加を辞退。そのためデーリーが繰り上がりで参戦することになりましたが、あまりに直前だったためデーリーがこの年の会場であるクルックドスティックゴルフクラブに到着したのはなんと大会初日の朝。そのため練習ラウンドはおろか、ドライビングレンジすら1球も打たずに参加するというハチャメチャな会場入りでした。

しかし、これでへこたれないのが“悪童”の異名を持つゲーリーならでは。練習せずにプレーに入ったにもかかわらず、初日からスコア69という好スタートを見せると、その後も首位をキープしつづけ、なんとそのまま逃げ切って見事にツアー初参戦初優勝という快挙を成し遂げました。あまりに破天荒な勝利だったために当時はフロック視する向きもありましたが、4年後の全英オープンも制して実力を証明しました。

デーリーの優勝時、全米プロゴルフ選手権おなじみの「ワナメーカー・トロフィー」が手渡されましたが、このトロフィーは実は2代目。というのも1924年に全米プロゴルフ選手権を制したウォルター・ヘーゲンに渡した際、彼がトロフィーを紛失するというハプニングが起きてしまいます。

通常ですと、優勝した翌年にトロフィーを返還するのが決まりでしたが、ヘーゲンは紛失したことを言い出せず、「自分が優勝するから持ってこなかった」という言い訳で返還をごまかしましたが、そこからヘーゲンはまさかの全米プロゴルフ選手権4連覇という未だに誰もなしえていない大記録を達成します。

そして1927年、5連覇を果たせずに敗れたヘーゲンはついにトロフィーの紛失を告白。主催者が慌てて新しいトロフィーを製作したのは言うまでもありません。ちなみにヘーゲンが紛失したトロフィーは2年後にヘーゲンが契約した倉庫から見つかるというエピソードが残っています。

いかがでしたか? 大会そのものこそ印象は薄めですが、優勝選手やトロフィーなどを振り返ると“濃すぎる”エピソードが満載な全米プロゴルフ選手権。2020年はTPCハーディング・パークでの開催を予定されていますが…次回はどんなエピソードが残されるのでしょうか?