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スペシャルインタビュー⑤工藤遥加 15年の節目と、カーセブンという存在

ラウンドを終えると、工藤遥加はゲストのもとへ向かった。名刺を差し出し、言葉を添え、深く腰を折る。その動きに、迷いはない。プレーが終わっても、役目は続く。ホステスプロとしての時間は、むしろそこから始まっていた。

この日の振る舞いは、特別な演出ではない。長くツアーを戦うなかで、身についた自然な所作だった。ラウンド中も、ゲストへの目配りは細やかだった。それでいて、過度に構えたところがない。空気を読み、距離を測り、場を和ませる。その姿は、もてなすという言葉よりも、相手に寄り添うような距離感に近かった。

カーセブンとの縁は、決して順風満帆な時期に始まったものではない。一時はイップスに悩み、自分のゴルフと向き合うため、立ち止まり、あえてスポンサー契約の話から距離を置いた時期もあった。

そこから少しずつ調子が戻り、成績が上向いてきた頃だった。工藤は自ら、一本の電話をかけている。相手は、カーセブンの井上社長だった。

「スポンサーについてもらえませんか」。自分で動くしかない。そう腹をくくっての行動だった。返ってきたのは、意外なほどあっさりとした返事だった。
「じゃあ、ちょっと聞いてみる」。ほどなくして、「OK」の連絡が入った。

それが、2021年から続く関係の始まりである。支えは、契約という形だけにとどまらない。リランキング制度が始まり、推薦枠が重要になる局面では、「遥加がきちんと推薦をもらえるように、俺も頑張るから」と声をかけられた。

大会への協賛には、当然、負担も伴う。それでも、「一緒に頑張ろう」と言って背中を押してくれた。その一言を、工藤は今も胸に留めている。

「悪い時も、気にしなくていいよって言ってくれるんです。 それでも、やっぱり気にはしますけど……」そう言って、少しだけ笑った。

結果だけでなく、プロセスを見てくれる存在がいる。それがどれほど大きな支えになるかを、彼女は知っている。

2025年3月。宮崎・UMKカントリークラブで、ついにその努力が実を結んだ。プロ15年目、4991日目の悲願達成。

初優勝の後、「景色が変わった?」と問われることが増えた。確かに、見えるものは変わった。ただし、それは安心ではなく、次の課題がはっきりと見えるようになった、という意味に近い。

「見ているところが、高くなりました」。技術も、メンタルも、求められるレベルが一段上がった。休んでいる暇はない。そう感じさせるだけの現実が、目の前にある。

その在り方は、JLPGAアワードの場でも印象を残していた。メディア賞『ベストコメント』に選ばれた言葉は、こうだった。
『失敗をするのがカッコ悪いんじゃなくて、チャレンジしないのがカッコ悪いんだ』

かつて、悩み、立ち止まり、回り道をしたからこそ、この言葉は軽くならない。シーズンを振り返ると、話題は自然と来年へ向かう。目標は、明確だ。
「複数回、優勝したい。それから、リコーカップに行きたいですね」。

メジャーや4日間大会への課題も、すでに整理できている。ドライバーショットの高さ。ウェッジの精度。やるべきことは、絞られている。

4991日目に咲いた花は、終わりではない。むしろ、ここからが本番だ。